エデシオ シー・フェルナンデス:
  日本では今、ガーデニングがブームなのですね。
町田錦一郎 :
  ええ、庭を演出するということに関心を持つ人が増えてきましたね。以前だったら、ブロックで囲んですませたところを、レンガを使うようになりました。レンガは今、ブームと言えるかもしれません。ただ、日本では、庭園文化の伝統はあるものの、『レンガ』に関しては遅れています。メーカーは明治時代からあるのですが、コンクリート製品に負けていますね。文化の違いでしょうか。そもそも、レンガは近代国家をつくるための資材で、国策から倉庫などの堅牢な建物を造るのが導入の始まりだったのです
エデシオ:
  レンガが発明されたのは6000年前です。ガーデニングに関して言えば、スペインでは、アルハンブラ宮殿に見られるような『パティオ』が有名です。これは、地中海からオリエントにかけての多くの文化にみられる建築形態のひとつで、文明の起こったはるかに昔から存在していたもの。アンダルシア地方の家々には必ずといってよいほどパティオ(中庭)があって、それは人々の生活に欠かせぬものとなって受け継がれてきました。レンガは、パティオの床にふんだんに使われ、レンガだけ、あるいは天然石と組み合わせることで無限の可能性を生みだしてきたと言えるでしょうね。そういった人々の生活との密接なつながりから育まれてきたものは、もはやレンガ文化やタイル文化と言える段階にまで成熟してきたと言えるかもしれません。
町田:
  なるほど、レンガは原料や製造法についてインターナショナルであるだけに、それを使うときに生じる各地域や民族での差異はレンガを通じての風土性や精神性の相違の手がかりを提供しているようにも感じられますね。



エデシオ:
  それとともに、レンガの決め手になるのが、土という素材です。土という素材は、生産地では選ぶことができないのですから。スペイン産レンガの特徴はとにかく土が良い、ということ。とりわけ、マルペサ工場付近で採れる土は抜群なのです。それは、絶対的なものだと言えます。
町田:
  実は、志摩スペイン村「パルケエスパーニャ」内にあるハビエル城には、当社の外壁材が採用されているのです。この素材は、海底火山を掘り起こして採取した石を原料にして造ったコンクリートなのです。こうした技術は、逆に言えば、国内産の良質なレンガがなかったからこそ、発展してきたものと言えるのかもしれません。
エデシオ:
  なるほど。日本の場合、コンクリートをベースにして表面的には非常にレンガや自然石に近い味を出すことに成功していると思います。そういう産業はスペインには少ないですね。



町田:
  一般家庭にまでガーデニングがブームになってまだ日が浅い日本では、日本オリジナルのスタイルというより、和風から洋風まで含めて様々なスタイルが混在していて、個人の趣味に合わせてスタイルをチョイスするという段階なのですね。そこで、ヨーロッパにも様々なスタイルがあると思うのですが、簡単に概観していただけますか?
エデシオ:
  イングリッシュガーデンと地中海風ガーデンの違いとして特徴的なのは、色彩感覚でしょうね。まずイングリッシュガーデンについてですが、例えば、イギリス人の使いたい色というのは、赤・茶色などダーク色です。ところが、地中海の人たちというのは、白い壁に花々の赤と葉の緑のパティオのイメージが良く伝えるように、白や明るい色使いをします。それが一番違う所だと思います。ヨーロッパのガーデニングの特徴を一言で言うと、幾何学的、シンメトリーということになるでしょうか。
町田:
  スペインでは、ガーデニングにおけるレンガの使い方はどのようなものでしょうか?
エデシオ:
  並べ方としては、3〜5センチくらいのモルタル層の上に、平らに、または縦に置く。床仕上げにレンガを使うことで、ある種の特徴的な要素を創り出すことができます。それは、例えば、形の規則性や均質性、鋭い角、美しい石目、崩したときの鮮やかな色などに現れます。今、日本のガーデニングでは、レンガがブームになりつつあるということでしたが、何か理由は考えられますか?
町田:
  そうですね。確かに日本にはレンガの伝統は全くないに等しいのですが、近年、話題を呼んでいる青森の三内丸山遺跡などでは、縄文式土器が層をなして発掘されました。縄文式土器というのは、当時の世界では一流の焼き物文化だったわけで、当時の日本人の生活の中で土を焼くということは文化として馴染んでいたはずです。弥生時代以降、そうしたものは失われてしまったのですが、土と火の力を感じさせてくれるセラミックというものに対する親しみは我々の潜在意識の中にあるのかもしれません。ガーデニングがブームになり、日常空間の中でセラミックそのものに触れることに、おもしろい可能性があるのではないか、と考える人が増えてきたのではないでしょうか。まあ、これは私の全くの個人的な意見に過ぎませんが。
エデシオ:
  わたしも日本で、レンガが文化として根付くことに期待しています。

町田錦一郎
マチダコーポレーション(株)代表取締役社長。住環境、都市環境創りを提案しエクステリアの総合企業として、高付加価値製品の開発に努め、斬新で華麗な都市空間、生活空間を目指している。

エデシオ シー.フェルナンデス
セラミカ マルペサ(株)S.A.代表取締役社長。スペイン国内、業界最大手のマルペサはスペイン南部アルハンブラ宮殿やフラメンコで有名な、アンダルシア地方にある。現在、建築中の工場(2001年稼働予定)は、最先端の生産設備を備え、ヨーロッパで最も近代的なレンガ工場となる。